お遍路。
それは弘法大師の足跡をたどり、八十八の霊場を巡礼することである。
それぞれの霊場には弘法大師の力の断片が残っているとされ、納経帳に朱印を集めることで、その力が宿るとされている。
これは、その力を信じ、それぞれの思いを胸にお遍路へと旅立った「2人の大学生」の物語である。
出発から8日目。2人はテントで目覚めた。現在5時半。
「眠たいよ……。まだ寝る……z」
「おい、寝るな! ここで寝たら死ぬぞおぉぉ!」
これが2人の日課、「雪山遭難ごっこ」である。ここから2人の1日が始まるのだ。
「今日は3つ寺を巡って、足摺岬を目指すぞ! だから早く行くぞ」
「いや〜。昨日の疲れ溜まってるし、雨だし、山あるしヤダ!」
「それもそうだなぁ。あああああああ。よし、わかった。今日は3つ寺を巡ったら終わりにして、温泉にでも行こうか」
「え、ほんと?……や、やった〜! じゃあ早く行こう」
「やれやれ。温泉が本当に好きだなぁ」
ようやく出発した2人。最初のお寺は「種間寺」だ。雨は降っていたが、順調に到着。納経を済ませ、朱印を押してもらった。
2つ目のお寺「清滝寺」を前にして突如それは現れ、私たちの行く手を阻む。
「きいてないよ〜。こんな坂なんて…」
「しょうがないだろ。力を得るためにはこの苦難を乗り越えなければいけないんだ!」
雨のおかげでやる気もガシガシ奪われていき、チャリに乗ることも早々に諦める。
「まだか…。まだなのか…」
「うるさいな。もうすぐだよ。っていうかそう信じたい……」
「うぅぅぅ~。また斜度が上がった気がする……」
「ん? あれはお寺の屋根じゃないか」
「え!ほんとぉー」
「歩く」という必殺技を使い、何とかお寺にたどり着き、朱印を押してもらった。
「えーー。もう一つお寺めぐるのぉ〜? もうここで寝ようよ」
「ここコンビニだぞ! 迷惑だから。ほら行くぞ!」
「はーい」
降り続く雨とともにやる気も流されていく。
「お! 3つ目のお寺が見えてきた」
「よかった。今回は登らなくていいんだ!!」
3つ目の寺「青龍寺」も無事到着。朱印も終えた。
「ってことは……」
「はいはい。温泉ね。ほら行くよ!」
「わーい!おんせん、おんせん!!」
こうしてこの日のお遍路巡りは午前中に終わったのだった。しかし、2人の旅はここで終わらない。「明日もつらそうだな。」そんな思いを胸に、2人は床につくのだった。
黒歴史や〜 タッキー